文が鮮明に統一された井尻千男氏は、次のようなデムパを飛ばしていた。「陽焼けしたガングロ肌に白っぽい口紅さして」…「そんな姿の少女たちを盛り場やメディアで見るたびに、漫録おやじとしては、腹を立てずにいられない。少女たちの情操教育に失敗したことが歴然と現れているからだ。少女ひとりまっとうに育てられないような国家と民族は滅ぶにきまっているのである」…「あのみっともないファッションは」…「美醜についての歴史的確信をすっかり喪失してしまった親世代の内面の表出にほかならない」(p.63)…。えっ。「なおいえば、戦後の日本人が放棄したものは戦争ばかりではなく、戦わなければ守れないすべての価値観、たとえば常識として心得るべき善悪や美醜についての歴史的確信を放棄してしまった」(p.64)…。つまり、霊感商法は悪であるという常識を放棄してしまったのである。「彼女たちは日本人に生をうけたこと自体を無意識の領域で憎悪している。それほどでないにしても愛していない」(pp.64-65)。そっ閉じ。
引用文献
井尻千男(2000)『漫録おやじ日本を叱る』 新潮社