高橋史朗は,1990年代前半は「子ども向けポルノコミックに触発された少年非行が全国各地で発生し」(p.282)ていたとし,「少年非行の原因をポルノコミックだけに求めるのは短絡的すぎるだろうが」「ポルノ漫画を子どもの時から見続ければ,潜在意識の奥底にそれが」「溜まり,性非行の“引き金”」(p.283)になると主張する.その理由は,「現代の子どもたちにとって漫画は『おやつ』どころか『主食』や『空気』のような存在になっているからである」(p.283)という.
また,「最大の問題は,『いやしき商業主義』によって,子どもをターゲットにし犠牲にして大人が大もうけしている点にある」(p.284)とし,「大人の営利のために,悪質なポルノコミックの氾濫が,『出版・表現の自由』の名の下に許されてよいはずがない」(p.284)と主張する.そして「ポルノコミックは」「講談社,小学館,集英社などの大手の有名出版社からも次々と大量に出版され」(p.284)ており,こうした出版社は「『たかがポルノコミック』と侮れない急成長ぶりなのである」(p.284)とし,「出版社側は『表現の自由』などと偉そうなことを言う前に」「自らの『いやしき商業主義』をまず反省する必要がある」(p.288)と批判する.
面白いのは,高橋史朗が「ポルノコミックには,男性の側からの一方的な描き方で」「女性の性を商品として扱っているものが少なくない」「女性の性を商品化することが女性の人権を損ね女性差別を助長することにつなが」(p.288)ると述べているところだろう.
なお,1991年,自民党有志議員は「子供向けポルノコミック等対策議員懇話会」(麻生太郎会長)を発足させたが,「議論の中で『子ども向けだけでなく,青少年にとって有害なものをすべて対象にすべき』『単行本だけでなく雑誌,アダルトビデオも検討対象にしてはどうか』などの意見が出たことから,子ども向けポルノコミック『等』でこれらを総称することにした」(p.286)とのことである.