【トンデモ】クラウゼヴィッツじゃないほうの『戦争論』(黒歴史をつくる会)

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 キバヤシよしのり氏の『戦争論』(トンデモ本)では「中学生はキレる流行にのってナイフで刺しまくり」(p.8)である。『MMR』11巻でも少年犯罪の凶悪化を取り上げ、その原因は「fの法則の乱れ」にあり、「形態共鳴」で日本中に広がるという(少年マガジン 1998年 第22・23号、第24号)。一方、『戦争論』では…「サヨク(=個人主義戦後民主主義)」(p.342)のせいにされる(もちろん統計的には少年犯罪は増えていないし凶悪化もしていないので『戦争論』も『MMR』も間違いである)。キバヤシよしのり氏は、「真性の左翼はこの日本には極めて少数者になったはずだ」「しかしその少数の『残存左翼』はじつにしぶとく」(p.22)、「新聞のほとんどに彼らはいる」「テレビ 雑誌 マスコミ内にいる」「教育界にかなりいる」「司法関係者にいる」「国外にまで暗躍している」「この『残存左翼』に操られやすいのが『うす甘いサヨク市民グループ』だ」(p.23)という。そして、「要するに戦後民主主義は『サヨク』なのだ!」「戦後民主主義で育った国民=サヨク」(p.24)、「無意識に『人権』などの価値に引きずられ反権力・反国家・市民主義になる者を『サヨク』とカタカナで書く」(p.25)と説明する。
 「サヨク」はGHQに洗脳されているらしい。「GHQは『ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム』という日本人に戦争の罪悪感を植えつける洗脳計画を実行した」(p.49)、「今の日本人で『個人主義だ』『個の精神だ』と唱えているやつは、アメリカの洗脳によって『公』を背負えないフヌケと化した者にすぎない 日本の個人主義者は単なるエゴイストである!」(p.55)
 ちょ、ちょっと待ってくれよ、キバヤシ! 俺たちはGHQの洗脳によって牟田口廉也のようなエゴイストになってしまい、さらに「fの法則の乱れ」で凶悪化し、「形態共鳴」で日本中に広がって一億総玉砕になってしまうのか? GHQの洗脳を解くにはどうしたらいいんだ? 教えてくれよ、キバヤシ
 
 「大東亜戦争肯定論」を唱えればいいんだよ!!

 な、なんだって!!

 「我々もあの戦争の『正義』を取り戻せばいい」(p.282)!
 「大東亜戦争こそが日本人の民族性を賭けた… 複雑にして多様な感動を紡ぎ出す一大叙事詩だったのである」(p.365)!

 「戦争の中で愛と勇気が試され 自己犠牲の感動が生まれ 誇りの貴さを思い知ることもある」(p.37)!
 特攻隊は「公のためにあえて個を捨てたのだ!国の未来のため つまり我々のために死んだのだ!」(p.96)

 「知ることこそが洗脳を解いて自分の頭で考えるきっかけになる」「知るのだ! 日本人に隠されている事実を!」「事実から目をそむけて歴史を語ることはできない!」(p.127)
 「『情報戦』『宣伝戦』という戦争もある 平和といわれる現在でもこの戦争は常に続いている 日本国では戦後 情報の発信基地であるマスコミと教育の大半が『反日情報宣伝軍』とな」(p.171)ってしまった!「情報の受け手ひとりひとりが『よき観客』となり反日情報に対抗せよ!」(p.171)

 あっ…(察し)。

 「動機なんかいくら不純でもいい 結果が良ければいい 結果主義だ!」(p.147)としつつも「八紘一宇を本気で信じていた者もいっぱいいた」(p.148)として動機を評価するキバヤシよしのり氏。そして、「インパール作戦を強行し全滅という悲劇を演じてしまった 悲しいほど無謀なお人好しだ」(p.148)などと言い出し、「無謀なお人好し」の凶暴性を語り始める…。
 「公」については、「高齢化社会 子供を2人以上産むのが公共心かもしれない」「税金や年金 払うのは公共心」(p.344)、「これらの公共心は日本国内であれば一応 大多数の同意が得られるものである」(p.345)とし、「『公』とは『国』のことなのだ」(p.346)とする。「国家アレルギーは個人を異様に偏重し 個人の権利のみ声高に主張させ 個人への義務や制限を取っ払い 公共心を崩壊させてゆく」(p.346)、「日本では『国家でなく個へ』と進歩的文化人・知識人が大合唱した結果 欲望だけが支える『エゴだけの個人』が大繁殖してしまった」(p.348)らしい…。「エゴだけの個人」とは、まさに牟田口廉也のことだろう。彼は次のように言い放った。「日本人は、もともと農耕民族で草食動物なのだ。ジャングルの中で草を食えば補給などいらぬのだ! 俺は嫌な思いしてないから、お前らの補給など俺の知ったことではないわ。だって全員どうでもいい人間だし。お前らが玉砕しても何とも思わん。それはリアルでの繋がりがないから。つまりお前らに対しての情などない」…。キバヤシよしのり氏も「海軍・陸軍合わせて4000人以上が特攻死したのに その責任をとった者はほとんどいなかったという」(p.358)とか言っちゃってるし。
 キバヤシよしのり氏は、保守派のおかしさ(面白さ)を指摘するため『戦争論』を描いたのかも知れない。2015年3月14日のブログでは、WGIPについて「保守派の間では当たり前になってる言葉」とか言って、保守派がトンデモになっていることを示唆している。しかしながら『戦争論』は予想外に売れちゃったので「あれは嘘だ」と言うタイミングを逃し、ソーカル事件のようにはならなかった。
 なお、外務省関係者によると「高橋史朗氏は、保守派の中ではバランスのとれた研究者」…。つまり、「バランスのとれたトンデモ」。『戦争論』の参考文献一覧(pp.380-381)にも高橋史朗氏の『検証 戦後教育』(トンデモ本)がありまぁす!

 

引用文献
小林よしのり(1998)『 新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』幻冬舎

 

【追記】

 キバヤシよしのり氏は断言する。

 「先の大戦を徹底的に分析し 我々は意識下に眠る何かを…喪失してしまった何かを探さねばならない 日本人の真の姿と巡り合ってみなければならない!」(p.31)
 「国のために何かをするなんて発想は今の日本人にはない そのように教育してきたのだ 日本の戦後は!」(p.59)

 一同沈黙…。

 「今では戦前を全否定した『戦後民主主義教育』で育った世代が親になってしまった」「教育とマスコミ… 圧倒的なサヨク空間の中で現代人はアイデンティティーを喪失していく」「大多数が無意識のうちに『人権』『自由』『個人』『反戦平和』などの価値観に影響される『サヨク』と化している 実に危険な状態だ」(p.182)!

 「若者には期待するがその若者の中からも崩壊は始まっている」(p.88)!
 「国はもちろん親のことだってどーでもいいという殺人少年が続々現れているもう一方で… 祖父の代の記憶を取り戻そうという若者も出現している!」(p.106)
 「若者よ!『公』の意識を覚醒させよ!」「祖父の持っていた歴史を取り戻して日本人に還るのだ!!」(p.107)

 教えてくれ、キバヤシ!若者が「公」の意識を覚醒するにはどうすればいいんだ? 

 「和民」だよ!!

 「和民」とは和の精神を持つ民族、つまり真の日本人のことだったんだよ!!愛国企業「和民」に就職すれば「人権」などのサヨク思想から脱却し、真の日本人を取り戻すことができるんだよ!!

 な、なんだって!!

 「戦後 社会党 朝日新聞 テレビを含むサヨクマスコミがやってきたことで歴史的評価に耐えるものは何一つなかったことは明らかである」(p.183)!
 「やつらが何を言ってきたかすべて記録に残っている あなた方の誰もが図書館でもインターネットでも使って調べれば すべて証明されることなのだ」(p.185)!

 でも、キバヤシさん、インターネットで調べてみると「和民」は日本人を取り戻すどころではなく、何か取り返しがつかない事態になりそうです…。

 …どうやら俺たちはとんでもない思い違いをしていたようだ。「人権=悪」という前提が間違っていたのかも知れない。 よし、MMR緊急出動だ!まずは国連人権大使に取材をしてみよう。


 「シャラップ!!」(取材拒否)

     ―完―


引用文献
小林よしのり(2001)『新ゴーマニズム宣言SPECIAL戦争論2』幻冬舎