【トンデモ】『霊性・霊界ガイド 物質世界の向こう側―あの世を感じて生きる 別冊正論28』

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 産経新聞の『正論』(月刊ムーのようなもの)…ではなくオウム真理教の『ヴァジラヤーナ・サッチャ』によれば、真珠湾攻撃は「実際は日本が攻撃させられたのである」…「『ABCD包囲陣』を敷いた。こうして日本を追いつめ、日本を挑発した!」「追いつめられた日本はやむなく対英米戦を決意した」…「日本側の暗号はすでに解読されており、その情報はアメリカやイギリスに筒抜けだった」…「それなのに、なぜ真珠湾『奇襲』が成功したのだろうか。――答えは一つ。アメリカは日本に奇襲『させた』のである」(AUM PRES p.68)…。高橋史朗氏…いや、違う。えっと、オウム真理教によると 「ルーズヴェルトは、日本に先制攻撃させることによって、第二次世界大戦に反対であったアメリカ国民の世論を動かし、アメリカ合衆国を参戦させるとともに、日本に戦争の責任を押しつけることに成功したのである!」(同上 pp.68-69)…。そして「戦後、日本占領軍は『3S政策』を打ち出した。これは日本において多大な成果を上げている」(同上 pp.90-91)らしい…。また、「フリーメーソンの上位組織イルミナティとは『覚醒者の集団』という意味」(同上 p.94)…。「覚醒者の集団イルミナティがすべての頂点に位置するのか?」「そうではない。『黒い貴族』たちの三百人委員会がその上に君臨するのだ」(同上 p.61)という。高橋史朗氏が「『タヴィストック洗脳研究所』と『新版300人委員会』」(高橋 p.96)を引用して洗脳を論じていたような気がするのは気のせい。
 さて、トンデモ・オカルト本『霊性・霊界ガイド 物質世界の向こう側―あの世を感じて生きる 別冊正論28』で壇蜜氏は「年配の方たちより若い人の方が『霊界』や『先祖の霊的な力』を信じる割合が増え」、「それ、漫画やライトノベルの影響もあるんだと思います。そういう『霊界』『第三世界』とか、『死後』『黄泉の世界』とかに触れる漫画、アニメ、小説って今、多いですから」…「どの人気アニメを見ても『時代をループする』『世界が分かれている』『神通力が使える』って要素があります」(壇蜜 p.19)などと語っている。幽霊なんているわけないっしょ。はぁ、神通力って…。それなんてオウムアニメ? 「願いを一つ叶える代わりに魔法少女にな」(同上 p.20)った高橋史朗氏が(ry
 そして村上和雄氏は「『サムシング・グレート』。サムシングですから、いまの科学では到底わからない、何か大変偉大な働きがあるということです」(村上 p.92)、「あなたの中にサムシング・グレートの働きがあります」(同上 p.93)、「日本人は古来、神仏を尊び、自然の恵みに感謝し、お互いに助け合って生きてきました。しかし、この精神文化の良き伝統は消えかけ、その遺伝子のスイッチはオフになってしまいました」、「真摯な魂からほとばしり出る祈りは、時間、空間を超えてサムシング・グレートに届くと思われます」(同上 p.104)などと言い出し、デムパがほとばしる。別冊正論編集部は「今、マスコミでは『孤立死』『葬送されない遺骨』『お墓の無縁化』が盛んに伝えられる。『だから日本の伝統・習俗など無視していい』という情報発信者の意図も垣間見える」「戦後の占領政策は伝統的な『家』『家族』を壊し、『大家族同居』は『核家族』、『家のため』『国のため』は『自分のため』にしようとした」(別冊正論編集部 p.290)などと高橋史朗氏のような妄想しちゃってる。なお、日本の核家族率は1920年(大正9年)に54%で戦前から核家族が主流。
 ついでに変な「日本人論」もオカルトのようなもの。「日本には『個人主義』という概念は馴染みがなかった、『個人主義』というのは、もともと西欧の考え方」(百地 pp.16-17)とか「日本人は西欧とは違い」「『農耕民族』です。『農耕民族』にとって個人の能力はあまり関係ありません」(同上 p.17)とか…。こういうのは根拠がなく、同調行動や協力行動の実験の結果は「日本人=集団主義/欧米人=個人主義」説には否定的。ちなみに、ある行動の原因を「国民性」や「精神文化」といった内部特性に求めるのは「対応バイアス」と呼ばれ、このバイアスは非常に強固で、行動が「状況」に強く縛られていることがはっきりしている場合でも「内部特性が原因」という推測をしやすい。外部の「状況」は過小評価されやすいけど、ミルグラムの服従実験は、人間の行動が「状況」によって大きく左右されることを明らかにしてる(「静岡刑務所の三悪人」実験は、体罰マニアも「状況」によっては転向することを示している…)。

 

引用文献
AUM PRES編(1995)『ヴァジラヤーナ・サッチャ  No.6』オウム出版
高橋史朗(2016)『「日本を解体する」戦争プロパガンダの現在 WGIPの源流を探る』宝島社
壇蜜(2016)「壇蜜の“あの世”問わず語り『死は怖くても、向こうの世界はハッピー!』」『霊性・霊界ガイド 物質世界の向こう側―あの世を感じて生きる 別冊正論28』産経新聞
村上和雄(2016)「科学の向こうの目に見えぬ偉大な存在 過去―現在―未来で人間とつながる」『霊性・霊界ガイド 物質世界の向こう側―あの世を感じて生きる 別冊正論28』産経新聞
別冊正論編集部(2016)「“ぼち墓地散歩”でお墓不安をブッ飛ばせ!!」『霊性・霊界ガイド 物質世界の向こう側―あの世を感じて生きる 別冊正論28』産経新聞
百地章監修(2014)『女子の集まる憲法おしゃべりカフェ』明成社