【書評のようなもの】山口智美・斉藤正美『宗教右派とフェミニズム』

 アジアに偉大なる指導者現る。その名は高橋史朗…!
 「1980年5月には、大平首相の私的諮問機関の研究グループが『家庭基盤充実のための提言』を提出した。『家庭』は社会の最も大切な基礎集団であると規定し『日本型福祉社会』と『家庭基盤充実』政策を打ち出す内容だった」…「家庭基盤充実政策は、その後の中曾根康弘時代の臨時教育審議会にも受け継がれ」…「現在の右派が目指す『家庭』関連政策の源流になった。八木秀次(麗澤大学教授)や高橋史朗(麗澤大学院特別教授)など右派の論者も大平時代の家庭基盤充実政策を高く評価していて、旧統一教会の関連団体である平和大使協議会も、『家庭基盤充実と「家庭」を単位とした国づくり・法制化運動』を活動目的として掲げている」(p.26)。いわばまさに統一教会によって家庭崩壊することは家庭基盤充実につながるのであります。
 「1992年、教育学者の高橋史朗が『週刊文春』6月11日号(文藝春秋)誌上で『小学校の「性交教育」これでいいのか』と題して性教育を批判し」(p.32)、非常にしつこい中において勝共連合=統一教会のビデオ『性教育過激派のねらい』に出演。「八木秀次は『男女共同参画』や『ジェンダーフリー』を批判するなかで、頻繁に『カタツムリ』に言及する」(p.43)が、訂正でんでんという指摘は全く当たりません。あべぴょんがカタツムリであったと伝えられよ。
 「2006年の改正教育基本法で第10条『家庭教育』が新設されるのを見据えて準備されてきたのが『親学』だ」(p.74)。"高橋らの集団"が推進する「『親学』は、教育の原点は家庭や親にあるとし」…「親が変われば子どもの心も育つという『主体変容』の考え方などを中心としている。そして『脳科学』も重視しながら『伝統的子育て』を推奨するのだが、『伝統的子育て』が具体的にどんなものかは曖昧なままだ」(p.75)。"江戸しぐさ"も伝統にしちゃった。
 その高橋史朗モラロジーの「道徳サロン」で「宇宙全体を構成する陰(女性的原理)と陽(男性的原理)の二気が宇宙の根源であり、生物の発生は雄と雌、男と女という対立原理の相互補完作用によって成立し、有性生殖として5億年の生命が連続している。この両性のア・プリオリな相違自体が『男女平等』を意味しており、日本文化の基層には『ジェンダー・フリー』でも『バック・ラッシュ』でもない第三の道(男女平等の視座)がしっかりと根付いて」(https://www.moralogy.jp/salon230818-01/ 検索日:2023年8月18日)いるとしている。そっ閉じ。

 

引用文献
山口智美・斉藤正美(2023)『宗教右派フェミニズム青弓社