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【トンデモ】八木秀次「保守とは何か」(『正論』2017年3月号)

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 産経新聞(世界日報のようなもの)のオカルト雑誌『正論』2017年3月号は「特集 シン・保守のHOPEたち 誰がポスト安倍・論壇を担うのか」…。保守しぐさ。未来人ジョン・タイター八木秀次氏は「かつて『保守』を名乗ることにはリスクをともなった。『保守』とは『保守反動』であり、右翼や民族派と同一視された。しかし、最近は誰もが自分を『保守』と言いたい気分に駆られているようだ」(八木 p.55)とか言っちゃう。現在では「『保守』は頭の悪い危険思想の持主と思われ」(同上)ているが、八木秀次氏が住む未来のディストピアでは、そうではないらしい。「私自身は20数年前から自らを『保守主義者』と称してきた。そこにはリスクを伴ったが、私には『新しいカッコいい思想』という思いが強かった。『保守主義者』と称するようになったのは、西部邁氏の影響だった」…「社会科学の分野から理屈を与えてくれたのが西部氏だった」(同上 p.56)…。疑似社会科学しぐさ。「『保守主義』は庶民の生きて知った知恵を重視・尊重する思想である。一部のインテリによる上からの、世の中を設計し直すかのような急激な改革には違和感を持つ思想だ」(同上)…。神武天皇Y染色体理論を唱える一部のインテリ乙。
 鈴木邦男氏は『論座』2006年3月号で「本屋に出ている『諸君!』『正論』の方が右翼・民族派よりも過激」(鈴木 p.50)だとしていた。保守主義(カタツムリズム)は過激さを増してカルト化し、ポスト・オウムのへんないきものになっている。また、保阪正康氏は『論座』2006年5月号で「5、6年前からであろうか。奇妙な体験が重なるようになった。大学生相手の講演や市民を対象にした文化講座で昭和史を論じることがあるのだが、質問の折などに『先生の考えは、自虐史観ですね』と乱暴に決めつける者が出てきたのである」(保阪 p.41)と述べていた。うわぁ…。姜尚中氏は次のように指摘。「90年代以降から現在に至る、こうした論壇のキーワードは『反日』だ。およそこれまでの戦後論壇の歴史で、『反日』がキーワードになった時代はなかったはずだ。しかし、87年の赤報隊による朝日新聞阪神支局事件のころからとくに人口に膾炙するようになり、ここに来て『反日』を基軸に、明確な歴史修正主義が出てきた」(姜 p.65)、「今後、これらの雑誌はさらにデマゴギー的な性格を強めていくのではないか」(同上 p.68)、「『反日』をリトマス試験紙として、雑誌がラベリングのためのツールになり、『反日』だと烙印を押されてしまえば論争が成り立たなくなる。そして雑誌も、『反日』というモジュール(基準単位)を何度も組み替えているだけで、新規な論がほとんど見られず、タイトルだけを見ても、いつ出た論考か違いがわからない」(同上 p.69)…。同誌には西部邁氏と八木秀次氏の対談も載っちゃってる。八木秀次氏は「保守言論界が以前から主張していたものに、現実のほうが追いついてきたというだけのことです」(西部・八木 p.72)…。西部邁氏は「10年ぐらい前、八木君が保守言論界に登場したとき」「僕は大いに期待したんですよ。八木君は憲法学者でしょう」(同上 pp.74-75)…。えっ。憲法学者なのか…。八木秀次氏は「いま保守言論界の大勢を占めるのは社会科学系の論者です。そうした保守言論が左翼言論を粉砕しているところが確かにある」「最近、保守系が左派系の言論に理屈で負けたことはない」(同上 p.76)、「左翼が言い出した嘘やデタラメを一つひとつ、つぶしているのが保守論壇の仕事の一つ」(同上 p.79)…。Y染色体や親学は最強。
 高橋史朗氏(魔法少女)は『正論』2007年8月号で「『親学』は、毎日新聞が4月26日付紙面で『一部の保守系有識者が提唱している考え方』としているような代物などではない。複数の教育研究者が集まって蓄積を重ねた共同研究、実践の成果なのだ。私自身が個人的に書いたものでもなければ、個人で提唱しているものでは断じてない」(高橋 p.237)と述べていた。「毎日新聞は執拗に親学批判報道を繰り返すが、6月2日付紙面で親学の是非を調査した世論調査結果を明らかにし、『親学 賛成47%反対44%半ば』となったとしている。しかし、詳細にみると、20代の国民は68%が親学に賛成しているのだ」(同上 p.238)…。えっ。壇蜜氏によれば「若い人の方が『霊界』や『先祖の霊的な力』を信じる割合が増え」、「漫画やライトノベルの影響もあるんだと思います。そういう『霊界』『第三世界』とか、『死後』『黄泉の世界』とかに触れる漫画、アニメ、小説って今、多いですから」(壇蜜 p.19)とのこと。これが“脳内汚染”の実例です。
 親学は共同研究らしいけど、愛国アイドルももち(波平のようなもの)が「高橋史朗教授が中心になって『親学』というのを熱心にされています」(百地他 p.32)と述べているように中心は高橋史朗氏。朝日新聞(2016年6月17日)によると高橋史朗氏は「日本会議と親学をつなげるのは的外れ」とか言ってるけど、椛島有三氏(行き過ぎた個人主義クレーマー)は「『親学』は、男女共同参画に対する対案の意味を持つ」、「ジェンダーフリーに対する保守の側の回答」(椛島 p.25)と言っちゃってる。ちなみに第1次安倍内閣のとき「親学を提唱して家庭教育にまで政府が干渉するような態度を示した。これに対しては、『教育再生』支持に向いていた親たちからも批判が出、第一次安倍内閣失速の一因ともなった」(長山 p.229)という指摘もある。
 ついでに産経新聞の「自己責任」論を置いておこう。「WEBで発信している『MSN産経ニュース』で派遣村に関する意見募集をしたところ」「多くは『自己責任』を強調したもの」…「『自ら派遣の仕事を選んでおいて、大変になったら「助けてくれ」はおかしい』『貯金はしてなかったのか』『選ばなければ仕事はあるのだから、がむしゃらに働け』『40歳、50歳になって、資格なし、スキルなし、貯金なしとはどういうことか』」(赤堀 pp.256-257)。これが産経しぐさ。

 

引用文献
八木秀次(2017)「保守とは何か~イントロダクション」『正論』2017年3月号 産経新聞
鈴木邦男(2006)「愛国者はそんなに偉いのか 僕が本物の右翼から学んだこと」『論座』2006年3月号 朝日新聞社
保阪正康(2006)「あやうい保守言論の『内実』」『論座』2006年5月号 朝日新聞社
姜尚中(2006)「『反日』かどうかを尺度とする自家中毒 歴史認識をめぐって」『論座』 2006年5月 朝日新聞社
西部邁八木秀次(2006)「激論 異世代『保守』言論人 われわれの思想はどこへ?」『論座』2006年5月号 朝日新聞社
高橋史朗(2007)「間違いだらけの家族政策 なぜ『親学』は葬られたのか」『正論』2007年8月号 産経新聞
壇蜜(2016)「壇蜜の“あの世”問わず語り『死は怖くても、向こうの世界はハッピー!』」『霊性・霊界ガイド 物質世界の向こう側―あの世を感じて生きる 別冊正論28』産経新聞
百地章・石井昌浩・三好祐司 (2007)『いま、教育の大転換が始まる!新教育基本法と教育の再生』明成社
椛島有三(2007)「安倍政権の展望と課題 日本会議福岡総会における提言」『祖国と青年』 2007年7月号 日本協議会
長山靖生(2014)『「世代」の正体 なぜ日本人は世代論が好きなのか』河出書房新社
赤堀正卓(2009)「マスコミが黙殺した本当の『年越し派遣村』 派遣切り批判に名を借りた赤いイデオロギー」『正論』2009年4月号 産経新聞