【トンデモ】それが『明日への選択』か…

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 大雑把にいうと1997年、インターネッツ黎明期に日本会議が設立され、1998年には歴史修正主義(日本会議史観)の主張がキバヤシよしのり氏の『戦争論』で提示され、へんないきものたち(潜在的右翼層が可視化されたもの)が湧いてきて「ここは酷いインターネッツですね」という状況が生まれた。その後、1999年には2ちゃんねるとかいう「ヤバイ奴らの集会所みたいなもん」が登場。2000年代前半~中盤では、「つくる会」内紛もあったりしてネット右翼宗教右翼の関係性がしばしば指摘され、「高橋史朗は土橋」云々とか書かれちゃってたと思うが、その一方で何故か「若者の右傾化」という間違った議論がなされ、宗教右翼の存在が見えなくなっていった。しかし2010年代になると山口智美氏の研究や、最近では菅野完氏の『日本会議の研究』などにより、再び宗教右翼が注目されるようになる(ちなみに高橋史朗氏は統一協会だと言われると怒る)。
 高橋史朗氏のデムパは、児童ポルノ規制、親学、江戸しぐさゲーム脳サムシング・グレートWGIP論…など、たくさんありまぁす。能川元一氏は、WGIP論について、それが「陰謀論となっているのは、第一に『洗脳』の効果を極度に過大評価し、GHQの占領の終了以降も日本人を呪縛し続けたという、心理学的にも無理のある主張をしているからである」(能川 p.18)と指摘している。前述のキバヤシよしのり氏の『戦争論』では、「GHQは『ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム』という日本人に戦争の罪悪感を植えつける洗脳計画を実行した」(小林 p.49)、「今の日本人で『個人主義だ』『個の精神だ』と唱えているやつは、アメリカの洗脳によって『公』を背負えないフヌケと化した者にすぎない 日本の個人主義者は単なるエゴイストである」(同上 p.55)とされ、「日本はGHQの洗脳でエゴイストが増えたのだ」っていうトンデモ設定になっている。
 「それが『明日への選択』か…」と呟く、日本政策研究センター(藁)の伊藤哲夫氏のデムパも面白い。彼は『明日への選択』平成6年(1994年)10月号で次のように述べている。「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」は「日本人の固有の『記憶』を、ただ消極的に消し去ろうとするのみではなく、もっと積極的に、日本人に対して自らの過去に対する『嫌悪の念』を植え付け、それと同時に、戦うこと一般への忌避の気持ちを醸成せしめる、いわば日本人を対象とした周到な『マインド・コントロール』の施策だといえる」(日本政策研究センター 2004 p.150)…。同誌平成13年(2001年)8月号では「つくる会」運動の失敗のせいで伊藤てつを氏は壊れてしまう…。「最近の保守指導層なるものは」「ピーマン(中身が空っぽ)に近い」、「保守――などといっても、そこに何らかの思想があるわけでもなく」(同上 p.285)…自己紹介乙。「最近の日本人に、真っ当な日本人としての主張・信念が、余りにも失われてしまっている」、「本来の日本人なら、その心の中にはそれなりの『日本人の魂』というものがある筈だ。この国の歴史伝統や先人たちに対する尊敬や愛着の思いである。あるいはこの国との一体感」(同上)…。すごい一体感を感じる。今までにない何か熱い一体感を。風…『日本の息吹』…吹いてきてる確実に、着実に、俺たちのほうに(以下略
 同誌平成15年(2003年)10月号では、てつを氏は「保守革命」とか言い出し、「戦後日本社会の風潮・タブーに正面から立ち向かい、戦後リベラリズムのもっとも核心にある制度・政策を破壊し、もって国家と国民精神を取り戻」(同上 p.372)そうとしちゃう。同誌平成17年(2005年)9月号で「歴史的事実というものを正当に踏まえない議論が、いかに国益を損なう行動や発言になるか」(日本政策研究センター 2014 p.172)云々と述べ、自分たちの活動が実際には国益を損ねてきたのを見なかったことにしちゃう。さらに同誌平成22年(2010年)12月号では、てつを氏に高橋史朗氏が憑依し、「戦後65年、この日本では『個人の尊厳』がいわれ」、「その個人尊重の結果ともいうべき現実が、この家族崩壊の惨状であるとともに」「『単身急増社会』のお寒い現実だったのである」(同上 p.179)とか言っちゃう。その対策として、てつを氏は「施設に頼らず、むしろ自らの手で親を介護しようとしている家族を支援したり、保育所に頼らず、自ら子供を育てようとしている母親を支援するといった、これまでのやり方の逆をいく政策も考えられるのではないだろうか」(同上 p.183)と述べている…。こうした自己責任論により「一般国民」を苦しめるのも、戦後日本を「破壊」する「保守革命」(反日活動)の一環なのだろう。
 ついでに日本会議の前身の「日本を守る国民会議」は「東京裁判史観に基づく戦後の国民意識の是正、具体的には現行憲法の改正」(日本を守る国民会議 p.1)を求めてきたとのこと…。彼らは「現憲法は我が国の歴史や伝統というものをほとんどふまえないものとなってしまいました」(同上 p.26)という。「憲法は、西欧の近代的な思想のもとに作られている傾向が多分に顕著ですが、我が国には聖徳太子の十七条憲法、『和を以て貴しと為す』という精神をふまえた日本古来の伝統的な国民感情というものがあります。そういう我が国の伝統的な国民精神に立脚した憲法を新たに創造」(同上 p.3)したいらしい…。和の精神を持つ民族――「和民」こそが真の日本人であり、憲法(社訓)に「365日24時間死ぬまで働け」とか書いちゃえば良いのかも知れない。「まずもって、国民自身が自由や権利を行使するにふさわしい国民でなくてはならない」、「国民一人一人が、人権を享有するにふさわしい生き方や努力をしていかなくてはならないことを自覚する必要がある」(同上 p.83)のだ。大学中退でしかも職歴のない椛島有三氏の憂鬱は続く…。
 なお、彼らは「ポルノ・コミック等の有害図書の販売を規制しようとして青少年保護条例を制定しても、知る権利の侵害であるとか、検閲となる恐れがあるといった批判が絶えず、効果的な規制もできないのが現状である」(同上 p.86)と嘆く。そして「有害図書から青少年を保護するためには、表現の自由といえども制限され得る旨の規定を、新憲法に盛り込むべきである」(同上 pp.86-87)とまでいう。有害ブログも規制したいと思う椛島有三氏であった…。

 

引用文献
能川元一(2016)「幼稚な陰謀論歴史修正主義」『週刊金曜日』1089号 金曜日
小林よしのり(1998)『 新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』幻冬舎
日本政策研究センター(2004)『「日本再生」の旗を掲げて この20年・われらは何を主張してきたか』日本政策研究センター
日本政策研究センター(2014)『日本の自立と再生をめざして 日本政策研究センターの主張と提言』日本政策研究センター
日本を守る国民会議(1994)『日本国新憲法制定宣言 21世紀の国家ビジョンを明示する』徳間オリオン