【書評のようなもの】能川元一・早川タダノリ『憎悪の広告』

 能川元一氏と早川タダノリ氏の『憎悪の広告』は「過去約20年間(1994年から2014年まで)に日刊全国紙に掲載された『正論』(産経新聞社)、『諸君!』(文藝春秋)、『SAPIO』(小学館)等いわゆる保守・右派論壇誌の広告をとりあげて」(p.3)、その広告のメッセージを考察している。「広告のフレーズは、“これはおっぴらに使ってよい言葉なのだ”というメタメッセージを伴」(p.4)う。例えば『正論』2014年1月号では「『在日特権』という主張を誌面に登場させて」(p.174)いる。こうした「雑誌広告はそれ自体がこの社会のマイノリティに対する攻撃となることがある」(p.206)。高橋史朗氏は、親学推進協会メールマガジン第83号で「読者の関心を集めるための刺激的で下品なタイトルに悩まされてきた月刊誌」云々などと述べていたが……あ、これが"脳内汚染"の実例です。

 

引用文献
能川元一・早川タダノリ(2015)『憎悪の広告』合同出版

【書評のようなもの】梁英聖『日本型ヘイトスピーチとは何か 社会を破壊するレイシズムの登場』

 梁英聖氏の『日本型ヘイトスピーチとは何か 社会を破壊するレイシズムの登場』によれば、日本のヘイトスピーチ頻発状況をもたらした社会的要因は「①反レイシズム規範の欠如、②『上からの差別煽動』、③反歴史否定規範の欠如と歴史否定の煽動、の三つの要因に整理できる」(p.23)という。③の「歴史否定の煽動」は、日本会議高橋史朗氏などが主導しているものである。「ヘイトスピーチがもつ①反人間性、②暴力のひどさはあまりにも明瞭なため、ほとんどだれにでも見えるが、ヘイトスピーチの核心部にある③レイシズム、④歴史否定のひどさは」(pp.44-45)見えにくく、反論しにくい。「九〇年代以降、政治空間からの歴史否定の頻発が」(p.270)差別煽動を補強し、また、反歴史否定規範がないため「歴史否定の台頭に対して、まったくと言っていいほど歯止めがかからなかった」(同上)。「一九九六年には、『新しい歴史教科書をつくる会』(つくる会)が発足」(p.277)し、高橋史朗氏らの運動が活発になった。1998年には小林よしのり氏の漫画『戦争論』がベストセラーになるが「同著で攻撃対象となったのは、『慰安婦』被害者だった。メディアによる歴史否定の商品化とその成功は、商品と市場の力を通じてレイシズムを煽動する先がけとなった」(p.278)。「ヘイトスピーチ頻発をくいとめるには、反歴史否定の規範形成」(p.300)が不可欠であり、高橋史朗氏らを批判することが重要である。

 

引用文献
梁英聖(2016)『日本型ヘイトスピーチとは何か 社会を破壊するレイシズムの登場』影書房

【トンデモ】親学推進協会メールマガジン第83号

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 親学推進協会(ヤバイ奴らの集会所みたいなもん)のメールマガジン第83号(2016年12月15日発行)のデムパが酷すぎる。「平成17年12月、親学推進協会の前身ともいうべき『PHP親学研究会』の提案者は浦山理事長であり、浦山理事長との出会いがなければ、親学推進協会は誕生しなかった。その意味で、親学推進協会の生みの親は浦山理事長といえる」などと言い始める高橋史朗氏。そのうち「私はやってない。潔白だ~」とか言いそう。
 「PHP総合研究所内に設置されたPHP親学研究会は」「10人のメンバーが60時間を超える議論を積み重ねて、その研究成果を『「親学」の教科書』(PHP研究所)として発行した。インターネット上では、『親学は高橋史朗が提唱するトンデモ学説』などと批判されているが、親学理論は10人の共同研究の成果であり、私個人が提唱したものではない」…。親学は、高橋史朗氏のようなものが10人集まって出来たトンデモ学説なのか…。
 また、高橋史朗氏は「平成13年の自治省の『スポーツ活動等を通じた青少年の健全育成に関する調査研究委員会』の座長として」「『大人が変われば、子どもは変わる』という『主体変容』の発想を青少年健全育成方針として全国に浸透させることに尽力した」とのこと。「主体変容」は「二重思考」のようなものだ。健全は不健全である。
 さらに高橋史朗氏は「『歴史認識問題研究会』を立ち上げ」、「10月から月2回の定例研究会を開催しているが、地道に実証的研究を積み重ね、質の高い研究誌の発行に力を注ぎたい」…。えっ。「今年は『歴史戦』に関する論文を月刊誌に最も多く寄稿した年であったが、読者の関心を集めるための刺激的で下品なタイトルに悩まされてきた月刊誌からそろそろ卒業して、来年は、これまでライフワークとして取り組んできた教師と親の人間力向上研修(師範塾と親学の講座)の総仕上げと、日本青年会議所と連携して、家庭・地域と連携した道徳教育のモデル作りを目指したい」…。はぁ。

【トンデモ】高橋史朗『親学Q&A』『脳科学から見た日本の伝統的子育て』『家庭教育の再生』

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 オカルティック・ウヨク・高橋史朗氏の『親学Q&A』は2010年1月から6月に産経新聞(月刊ムーのようなもの)に連載されていたデムパ記事を元に加筆したトンデモ本である。まず、学級崩壊の背景には「親心の喪失、睡眠と食生活の乱れ、子供を取り巻く有害環境などによる子供の『脳内汚染』、モンスターペアレントと『発達障害』の急増、放任と自由を履き違えた誤った子供中心主義による躾の欠如などがあ」(p.2)るとデムパを飛ばしている。そして、かつて「日本の子供が礼儀正しかったのは江戸町方で組織されていた江戸講や寺子屋などで、親と地域が一体となって『江戸しぐさ』を教えてきたから」(p.33)とか言っちゃう。脳内汚染された高橋史朗氏は「科学的知見によって、日本の伝統的な子育ての意義が創造的に再発見されています」(p.45)とか、さいたま市教育相談センター所長(金子保氏)のデムパを引用し「日本の伝統的な子育てを取り戻すことによって、発達障害を予防」(p.66)などと危ないことを言い出す。
 『脳科学から見た日本の伝統的子育て―発達障害は予防、改善できる』(第4章の初出は殆ど産経新聞)でも「日本の子供の礼儀が正しかったのは、江戸町方で組織されていた江戸講や寺子屋などで、親と地域が一体となって『江戸しぐさ』を教えてきたからです」(p.9)とか言っちゃってる。「子供の脳に大きな変化が起きている」、「専門家は脳内汚染と呼んでいます」(p.5)…。脳内汚染で「共感性と自制心の欠如」(同上)がおき、これが「相次ぐ凶悪事件を起こした少年たちの共通点」(同上)…。自制心は「自律心につながっていくもので」(同上)、「共感性がないために対人関係がうまくいかず、自律心がないために引きこもってしまうニート(引きこもり)の問題にもつながってい」(p.6)るとのこと…。疑似「脳生理学者の澤口俊之氏は、これまで先天的な脳の障害と考えられてきた発達障害は、環境要因や子育てによる影響も大きいと述べています」(p.7)とか、さいたま市教育相談センター所長は、発達障害は「二歳までに発見すれば治り、三歳までなら五分五分の確率で治ると述べています」(pp.7-8)とか「所長によれば、昔から日本人が当たり前に行ってきた伝統的な子育てや普通の環境を取り戻すことが発達障害の予防につながる」(p.13)とかデムパ飛ばしまくり。澤口俊之氏やゲーム脳森昭雄氏らが関わっている日本健康行動科学会(高橋史朗氏が理事)と感性・脳科学教育研究会(高橋史朗氏が会長)は疑似科学の団体であり、高橋史朗氏は「日本の伝統的な子育てが発達障害の『予防』や早期支援・療育に効果があるという臨床事例研究の具体的成果を日本財団の助成を得て発表していきたいと思います」、「『発達障害予防支援研究会』を青年会議所のメンバー(発達障害児の親を含む)を中心に立ち上げ、本格的研究に着手しています」(p.26)などと意味不明な供述をしている。「澤口俊之氏の学説は学会の定説ではありませんが、文科省脳科学の検討会の委員も務め一定の評価を得ています」(p.59)…。えっ。発達障害の「予防により施設やスタッフにかかる予算面など莫大な効果が期待できる」(p.56)とかナチスみたい…。
 上記2冊のトンデモ本の2年後(2012年)に出した『家庭教育の再生―今なぜ「親学」「親守詩」か。』ではデムパがさらに酷くなっている。「専門家は学級崩壊の原因のひとつを『脳内汚染』と言っています」(p.5)、「いま、多くの子供たちが病んでいる」、「さらに深刻なのは、軽度発達障害の二次障害としての非行や虐待が増えている」(p.6)…。「子供の変化は、子供を取り巻く環境の変化によるものであり、その環境の変化とは、テレビやゲームなど疑似現実空間の浸透」(p.8)…。「東京生まれ東京育ちの小学生に星空を見せたとき」「『空にじんましんができたみたいで気持ちが悪い』と言ったのです。これが“脳内汚染”の実例です」(p.11)…。「村上和雄先生は、遺伝子のスイッチのオン・オフ」(p.12)…。「母性本能の遺伝子がスイッチ・オンになっていない大人が増えてしまっている」(p.14)…。「妊娠中の携帯電話の使用は、電磁波などの影響により子供の脳に悪影響を与えるといわれている」(p.15)…。「私の親は、歴史を明らかにしてほしいという願いをこめて『史朗』」(p.17)…。えっ。「日本の子供が礼儀正しかったのは江戸町方で組織されていた江戸講や寺子屋などで、親と地域が一体となって『江戸しぐさ』を教えてきたからです」(p.68)…。あっ…(察し)。
 境界設定問題(科学と疑似科学の線引き問題)については1980年代にラウダンが結論を出し、根拠のある主張とそうでない主張(デムパ)の区別さえできれば十分で、「科学的」かどうかという問題は必要ないとした。とはいえ現在、科学と疑似科学を区別することの需要が高まっており、実践的な文脈での「境界設定」が求められている(とりあえず高橋史朗氏がやってるのは疑似科学)。

 

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引用文献
高橋史朗(2010)『親学Q&A』登竜館
高橋史朗(2010)『脳科学から見た日本の伝統的子育て―発達障害は予防、改善できる』モラロジー研究所
高橋史朗(2012)『家庭教育の再生―今なぜ「親学」「親守詩」か。』明成社

【書評のようなもの】菅野完『日本会議をめぐる四つの対話』

 菅野完氏の『日本会議をめぐる四つの対話』を読み終わったので引用しぐさ。「路上で繰り広げられるいわゆる『ヘイトデモ』の参加者たちの口吻と、『正論』や『WiLL』などの保守系論壇誌に登場する論説の内容はほぼ同じ」(p.9)であり「『保守系論壇人』の来歴や所属を調べると、そのほとんどが」(p.10)日本会議へんないきものたちである。愛国アイドルももち(波平のようなもの)とかオカルティック・ウヨク・高橋史朗氏とか…。
 白井聡氏は、在日コリアンに憎悪が向かう理由の一つとして「在日コリアンたちが『権利を主張する人々』にならざるを得なかったから」(p.51)ということを挙げ、「権利を主張する人間は、和を乱していると思われる。対立などあってはならない社会の中で、不当にも対立を起こそうとしているように見える」(同上)ために標的になるのではないかと指摘。菅野完氏は「日本会議の会員の中にも、自分で組織を持ち、『行動する保守』として保守運動をやっている人たち」(p.52)が多数存在し「こうした人たちが日本会議の中で運動する時に何を訴えているかと言うと」「フェミニズム運動への批判」(同上)であるという。また、菅野完氏は「丸山眞男を持ち出せば、日本会議を支えているのは丸山のいう『社会の下士官』みたいな人たち」(p.70)で「丸山はこうした人々が日本型ファシズムの担い手になったと」(pp.70-71)しており、「日本は近代というものをもう一度インストールし直すつもりでやらないといけないと思う」(p.71)と述べている。
 村上正邦氏は「僕は伊藤哲夫を軽蔑しているんです。お金をもらう時は『玉置さん、玉置さん』とペコペコするけども、部屋を一歩出れば玉置を批判するんだから」、「僕は今でも時々ニューオータニで伊藤哲夫を見かけるけど、絶対に声をかけません」、「玉置の目の前では良いことばかり言って、離れれば悪口を言うような男だから。二重性を持った男とは付き合わない」(p.87)とのこと…。この二重性は、伊藤哲夫しぐさ。横山孝平氏は「日本会議は、自分たちが体制だと勘違いしている団塊の世代を中心に構成されているのだろうと思います」(p.117)と述べている。魚住昭氏は「日本の戦後の修正資本主義がうまくいった」(p.166)ために左派運動が衰退したという側面もあったと指摘。
 一方、「日本会議のイデオローグである高橋史朗氏は」(憲法24条の)「『両性の合意』を『両家の合意』という形に改正しない限り、日本の風紀の紊乱は収まらないと考えている」(p.129)…。これはひどい。「椛島さんは人望はないけれども有能な人材」(p.196)…。あっ…(察し)。

 

引用文献
菅野完(2016)『日本会議をめぐる四つの対話』ケイアンドケイプレス

【トンデモ】『日本の息吹』

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 すごい一体感を感じる。今までにない何か熱い一体感を。『日本の息吹』…なんだろう吹いてきてる確実に、着実に、俺たちのほうに。日本トンデモ会議の『日本の息吹』ブックレットによると「日本人の最大の強みは集団主義」(関岡 p.29)だったけど「日本人が個人主義へどんどん傾斜してゆき、その最大の強みであった集団への一体感と忠誠心を失」(同上 p.31)ってるらしい。もちろん「日本人=集団主義」説には根拠がない。「組織や企業社会が激変していくなかで、日本人の会社への忠誠心や帰属意識は急速に摩滅し」(同上 p.30)、「若者はそうした風潮を敏感に察知して、フリーターからニートへと、集団へ帰属することを忌避して『個』のなかに引きこもるようになってい」(同上 p.31)るとか個人主義は「我々日本人が長い歴史の中で培ってきた『和を以って貴しと為し』、『長幼の序を重んじ』、『弱きを助け、強きを挫く』という生き方、価値観とは根本的に相容れない」(同上 pp.33-34)とか「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムによって贖罪意識を刷り込まれ、日本国家=悪という意識が占領終了後も続いているのが、今日の日本に無国籍的な人間が増殖している背景」(同上 p.37)とかデムパ飛ばしすぎ。
 「学生の意識は、ここ3年くらいはそれまでの10年と比べて顕著に違ってきている」、「北朝鮮問題とか、小泉さんの靖國参拝、あるいは小林よしのりさんの漫画などの良書の発刊等々、複合的な要因でそういう変化が促されている」(中西 p.15)とのことで「“抵抗勢力”は『プチ・ナショナリズムだ』とかいって非難しましたが」「“抵抗勢力”が退場して、70年代以降生まれの世代が健全な国家意識を育むことに成功し、やがて社会の中核を占めるときがくれば、日本は劇的に変わる」(同上 p.16)らしい。はぁ…。インターネッツ黎明期の1997年に日本トンデモ会議設立、1998年にキバヤシよしのり氏の『戦争論』発売、1999年に「2ちゃんねる」設立、2001~2006年が小泉内閣インターネッツの普及に伴い潜在右翼(産経のようなもの)が「ネット右翼」として可視化されるようになり今に至る…。ここは酷いインターネッツですね
 『日本の息吹』の言説を検討した研究によると「日本の伝統のなかにある日本人は、『勤勉』『謙譲』『和を尊ぶ(=個よりも集団を優先する)』といった固有の性質をもっており、それはとても美しいものであるとされる」(平野 p.24)けど、日本トンデモ会議には、そんな人いません。GHQは「集団の和を尊ぶ日本人の美徳を否定し、個人の権利だけを尊重するような」「価値観にもとづく憲法を押しつけ」、「現在の多くのマスメディアやそこに登場する『知識人』は、この価値観に『洗脳』されているか、日本を破壊する悪しき目的をもって」「『戦後レジーム』を礼賛する傾向があるが、そのことに気付いているのは、『健全な常識』を維持する少数の人間だけ」(同上 p.25)…。健全は不健全であり、常識は非常識である。「自分たちを『目覚めている少数派』とみなす一方」「意見の異なる他者とのやりとりは、『攻撃』と『守り』、『洗脳』と『宣伝』といった言葉で表される」(同上 p.28)…「引用文中のGHQ共産主義の関係の『事実関係』やフランクフルト学派の定義などは、とうてい『保守』言論の外では通用しない怪しげなものである」(同上 p.30)…。あっ…(察し)。

 

引用文献
関岡英之(2007)『アメリカの言いなりでいいのか!?仕組まれた「構造改革」と汎アジア共同体構想 (日本の息吹ブックレット) 』明成社
中西輝政(2007)『激動する世界と日本再建の課題 (日本の息吹ブックレット) 』明成社
平野直子(2016)「保守言論における『日本』と『危機』――カテゴリの更新を拒む言説とその限界」岡本智周・丹治恭子編著『共生の社会学』太郎次郎社エディタス

【トンデモ】『霊性・霊界ガイド 物質世界の向こう側―あの世を感じて生きる 別冊正論28』

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 産経新聞の『正論』(月刊ムーのようなもの)…ではなくオウム真理教の『ヴァジラヤーナ・サッチャ』によれば、真珠湾攻撃は「実際は日本が攻撃させられたのである」…「『ABCD包囲陣』を敷いた。こうして日本を追いつめ、日本を挑発した!」「追いつめられた日本はやむなく対英米戦を決意した」…「日本側の暗号はすでに解読されており、その情報はアメリカやイギリスに筒抜けだった」…「それなのに、なぜ真珠湾『奇襲』が成功したのだろうか。――答えは一つ。アメリカは日本に奇襲『させた』のである」(AUM PRES p.68)…。高橋史朗氏…いや、違う。えっと、オウム真理教によると 「ルーズヴェルトは、日本に先制攻撃させることによって、第二次世界大戦に反対であったアメリカ国民の世論を動かし、アメリカ合衆国を参戦させるとともに、日本に戦争の責任を押しつけることに成功したのである!」(同上 pp.68-69)…。そして「戦後、日本占領軍は『3S政策』を打ち出した。これは日本において多大な成果を上げている」(同上 pp.90-91)らしい…。また、「フリーメーソンの上位組織イルミナティとは『覚醒者の集団』という意味」(同上 p.94)…。「覚醒者の集団イルミナティがすべての頂点に位置するのか?」「そうではない。『黒い貴族』たちの三百人委員会がその上に君臨するのだ」(同上 p.61)という。高橋史朗氏が「『タヴィストック洗脳研究所』と『新版300人委員会』」(高橋 p.96)を引用して洗脳を論じていたような気がするのは気のせい。
 さて、トンデモ・オカルト本『霊性・霊界ガイド 物質世界の向こう側―あの世を感じて生きる 別冊正論28』で壇蜜氏は「年配の方たちより若い人の方が『霊界』や『先祖の霊的な力』を信じる割合が増え」、「それ、漫画やライトノベルの影響もあるんだと思います。そういう『霊界』『第三世界』とか、『死後』『黄泉の世界』とかに触れる漫画、アニメ、小説って今、多いですから」…「どの人気アニメを見ても『時代をループする』『世界が分かれている』『神通力が使える』って要素があります」(壇蜜 p.19)などと語っている。幽霊なんているわけないっしょ。はぁ、神通力って…。それなんてオウムアニメ? 「願いを一つ叶える代わりに魔法少女にな」(同上 p.20)った高橋史朗氏が(ry
 そして村上和雄氏は「『サムシング・グレート』。サムシングですから、いまの科学では到底わからない、何か大変偉大な働きがあるということです」(村上 p.92)、「あなたの中にサムシング・グレートの働きがあります」(同上 p.93)、「日本人は古来、神仏を尊び、自然の恵みに感謝し、お互いに助け合って生きてきました。しかし、この精神文化の良き伝統は消えかけ、その遺伝子のスイッチはオフになってしまいました」、「真摯な魂からほとばしり出る祈りは、時間、空間を超えてサムシング・グレートに届くと思われます」(同上 p.104)などと言い出し、デムパがほとばしる。別冊正論編集部は「今、マスコミでは『孤立死』『葬送されない遺骨』『お墓の無縁化』が盛んに伝えられる。『だから日本の伝統・習俗など無視していい』という情報発信者の意図も垣間見える」「戦後の占領政策は伝統的な『家』『家族』を壊し、『大家族同居』は『核家族』、『家のため』『国のため』は『自分のため』にしようとした」(別冊正論編集部 p.290)などと高橋史朗氏のような妄想しちゃってる。なお、日本の核家族率は1920年(大正9年)に54%で戦前から核家族が主流。
 ついでに変な「日本人論」もオカルトのようなもの。「日本には『個人主義』という概念は馴染みがなかった、『個人主義』というのは、もともと西欧の考え方」(百地 pp.16-17)とか「日本人は西欧とは違い」「『農耕民族』です。『農耕民族』にとって個人の能力はあまり関係ありません」(同上 p.17)とか…。こういうのは根拠がなく、同調行動や協力行動の実験の結果は「日本人=集団主義/欧米人=個人主義」説には否定的。ちなみに、ある行動の原因を「国民性」や「精神文化」といった内部特性に求めるのは「対応バイアス」と呼ばれ、このバイアスは非常に強固で、行動が「状況」に強く縛られていることがはっきりしている場合でも「内部特性が原因」という推測をしやすい。外部の「状況」は過小評価されやすいけど、ミルグラムの服従実験は、人間の行動が「状況」によって大きく左右されることを明らかにしてる(「静岡刑務所の三悪人」実験は、体罰マニアも「状況」によっては転向することを示している…)。

 

引用文献
AUM PRES編(1995)『ヴァジラヤーナ・サッチャ  No.6』オウム出版
高橋史朗(2016)『「日本を解体する」戦争プロパガンダの現在 WGIPの源流を探る』宝島社
壇蜜(2016)「壇蜜の“あの世”問わず語り『死は怖くても、向こうの世界はハッピー!』」『霊性・霊界ガイド 物質世界の向こう側―あの世を感じて生きる 別冊正論28』産経新聞
村上和雄(2016)「科学の向こうの目に見えぬ偉大な存在 過去―現在―未来で人間とつながる」『霊性・霊界ガイド 物質世界の向こう側―あの世を感じて生きる 別冊正論28』産経新聞
別冊正論編集部(2016)「“ぼち墓地散歩”でお墓不安をブッ飛ばせ!!」『霊性・霊界ガイド 物質世界の向こう側―あの世を感じて生きる 別冊正論28』産経新聞
百地章監修(2014)『女子の集まる憲法おしゃべりカフェ』明成社