【書評のようなもの】伊藤昌亮『ネット右派の歴史社会学』

 ネット右翼という語は、1990年代後半からしばしば使われ、「たとえば99年4月に結成されたネット上の右翼団体『鐵扇会』に関連し、この用語が用いられていた」(p.17)。今ではアダルトマン将軍やネット高橋史朗などといった呼び方もあるが、このポスト・オウムのへんないきものたちは、非常に危険である。
 「ネット右派言説を構成しているいくつかのアジェンダのうちでも特に嫌韓、反リベラル市民、歴史修正主義という3つのアジェンダは、その出自を1990年代の出版メディアのなかに持っている」…「その後、90年代後半からのネットの普及に伴ってネットメディアのなかに広く浸透し」(p.37)ていった。高橋史朗らのデムパがネットで拡散されたのである。
 文が鮮明に統一され、「現在も日本会議の政策委員を務めている高橋は、かつて生学連の委員長を務め、その後『日本教育研究所』という組織の事務局長となった人物」(p.139)。オウム真理教の教祖に似ているが、別人であるらしい。
 「1997年3月ごろに立ち上げられ、サブカル保守クラスタの一大拠点となったサイト『日本ちゃちゃちゃ倶楽部(日本茶掲示板)』ではその活動目的として、『教科書の従軍慰安婦についての記述』の『訂正または削除を求める』こと、その過程で『普通の人たちの心の片隅でくすぶっている(略)素朴な隠れた本音を引き出』すことなどが掲げられていた」(pp.159-160)。普通のオウム信者の本音を引き出すんですね、わかります。「『日本ちゃちゃちゃ倶楽部』では2000年の夏ごろから一部の論者により、とりわけ在日コリアンをターゲットとする排外主義的な発言が繰り返されるようになる」(p.265)。
 「右翼団体というよりもむしろカルト宗教団体と呼ぶべきかもしれないが、パソコン通信の時代からあちこちの掲示板に出入りしてはさまざまな論争を巻き起こし、差別的な言動を繰り返して物議を醸すことも多かった『日本平和神軍』」(p.184)…。「『イオンド大学』などの怪しげな教育機関を運営していた」(p.283)。イオンド大学キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
 2004年、チャンネル桜(エバ国家日本文鮮明化チャンネル錯乱)が開局し、賛同者には「名越二荒之助」(p.414)がいて、設立発起人と番組審議会委員には「高橋史朗も名を連ねていた」(p.415)。そっ閉じ。

 

引用文献
伊藤昌亮 (2019)『ネット右派の歴史社会学 アンダーグラウンド平成史1990-2000年代』青弓社