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【トンデモ】高橋史朗『親学Q&A』『脳科学から見た日本の伝統的子育て』『家庭教育の再生』

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 オカルティック・ウヨク・高橋史朗氏の『親学Q&A』は2010年1月から6月に産経新聞(月刊ムーのようなもの)に連載されていたデムパ記事を元に加筆したトンデモ本である。まず、学級崩壊の背景には「親心の喪失、睡眠と食生活の乱れ、子供を取り巻く有害環境などによる子供の『脳内汚染』、モンスターペアレントと『発達障害』の急増、放任と自由を履き違えた誤った子供中心主義による躾の欠如などがあ」(p.2)るとデムパを飛ばしている。そして、かつて「日本の子供が礼儀正しかったのは江戸町方で組織されていた江戸講や寺子屋などで、親と地域が一体となって『江戸しぐさ』を教えてきたから」(p.33)とか言っちゃう。脳内汚染された高橋史朗氏は「科学的知見によって、日本の伝統的な子育ての意義が創造的に再発見されています」(p.45)とか、さいたま市教育相談センター所長(金子保氏)のデムパを引用し「日本の伝統的な子育てを取り戻すことによって、発達障害を予防」(p.66)などと危ないことを言い出す。
 『脳科学から見た日本の伝統的子育て―発達障害は予防、改善できる』(第4章の初出は殆ど産経新聞)でも「日本の子供の礼儀が正しかったのは、江戸町方で組織されていた江戸講や寺子屋などで、親と地域が一体となって『江戸しぐさ』を教えてきたからです」(p.9)とか言っちゃってる。「子供の脳に大きな変化が起きている」、「専門家は脳内汚染と呼んでいます」(p.5)…。脳内汚染で「共感性と自制心の欠如」(同上)がおき、これが「相次ぐ凶悪事件を起こした少年たちの共通点」(同上)…。自制心は「自律心につながっていくもので」(同上)、「共感性がないために対人関係がうまくいかず、自律心がないために引きこもってしまうニート(引きこもり)の問題にもつながってい」(p.6)るとのこと…。疑似「脳生理学者の澤口俊之氏は、これまで先天的な脳の障害と考えられてきた発達障害は、環境要因や子育てによる影響も大きいと述べています」(p.7)とか、さいたま市教育相談センター所長は、発達障害は「二歳までに発見すれば治り、三歳までなら五分五分の確率で治ると述べています」(pp.7-8)とか「所長によれば、昔から日本人が当たり前に行ってきた伝統的な子育てや普通の環境を取り戻すことが発達障害の予防につながる」(p.13)とかデムパ飛ばしまくり。澤口俊之氏やゲーム脳森昭雄氏らが関わっている日本健康行動科学会(高橋史朗氏が理事)と感性・脳科学教育研究会(高橋史朗氏が会長)は疑似科学の団体であり、高橋史朗氏は「日本の伝統的な子育てが発達障害の『予防』や早期支援・療育に効果があるという臨床事例研究の具体的成果を日本財団の助成を得て発表していきたいと思います」、「『発達障害予防支援研究会』を青年会議所のメンバー(発達障害児の親を含む)を中心に立ち上げ、本格的研究に着手しています」(p.26)などと意味不明な供述をしている。「澤口俊之氏の学説は学会の定説ではありませんが、文科省脳科学の検討会の委員も務め一定の評価を得ています」(p.59)…。えっ。発達障害の「予防により施設やスタッフにかかる予算面など莫大な効果が期待できる」(p.56)とかナチスみたい…。
 上記2冊のトンデモ本の2年後(2012年)に出した『家庭教育の再生―今なぜ「親学」「親守詩」か。』ではデムパがさらに酷くなっている。「専門家は学級崩壊の原因のひとつを『脳内汚染』と言っています」(p.5)、「いま、多くの子供たちが病んでいる」、「さらに深刻なのは、軽度発達障害の二次障害としての非行や虐待が増えている」(p.6)…。「子供の変化は、子供を取り巻く環境の変化によるものであり、その環境の変化とは、テレビやゲームなど疑似現実空間の浸透」(p.8)…。「東京生まれ東京育ちの小学生に星空を見せたとき」「『空にじんましんができたみたいで気持ちが悪い』と言ったのです。これが“脳内汚染”の実例です」(p.11)…。「村上和雄先生は、遺伝子のスイッチのオン・オフ」(p.12)…。「母性本能の遺伝子がスイッチ・オンになっていない大人が増えてしまっている」(p.14)…。「妊娠中の携帯電話の使用は、電磁波などの影響により子供の脳に悪影響を与えるといわれている」(p.15)…。「私の親は、歴史を明らかにしてほしいという願いをこめて『史朗』」(p.17)…。えっ。「日本の子供が礼儀正しかったのは江戸町方で組織されていた江戸講や寺子屋などで、親と地域が一体となって『江戸しぐさ』を教えてきたからです」(p.68)…。あっ…(察し)。
 境界設定問題(科学と疑似科学の線引き問題)については1980年代にラウダンが結論を出し、根拠のある主張とそうでない主張(デムパ)の区別さえできれば十分で、「科学的」かどうかという問題は必要ないとした。とはいえ現在、科学と疑似科学を区別することの需要が高まっており、実践的な文脈での「境界設定」が求められている(とりあえず高橋史朗氏がやってるのは疑似科学)。

 

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引用文献
高橋史朗(2010)『親学Q&A』登竜館
高橋史朗(2010)『脳科学から見た日本の伝統的子育て―発達障害は予防、改善できる』モラロジー研究所
高橋史朗(2012)『家庭教育の再生―今なぜ「親学」「親守詩」か。』明成社