【トンデモ】高橋史朗講演会「家族の絆と男女共同参画」

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 高橋史朗講演会「家族の絆と男女共同参画」(2013年12月13日)が面白すぎるので転載しちゃおう。

 

ウイズ・ア・スマイル
http://cocotiyoshiko.mikosi.com/katu2.html
高橋氏は「男のくせに、女のくせにと強制してはいけないが男らしさ、女らしさを否定してもいけない。両性の特性を考慮するというと女性に対する差別につながると言われるが、男女を区別することは差別ではない。男女の関係は優劣ではなく補完関係だと行き過ぎたジェンダーフリーの問題点を指摘した。また、友達親子が増え学級崩壊が起こっている。これは、万引きしても犯罪だという価値規範を親子が共有できず、お金を払って反省しない親が出てきた。「ならぬものはならぬ」と熱く子どもと向き合える親がいなくなった。美しいものを美しいと感動を分かち会えるかかわりを持ち大自然を味わう心のゆとりを大人が持てなくなった。子どものために犠牲になる親がなくなった。戦争に負けて自信がなくなり、そんな親に育てられた子どもが親になり、身近な大人が夢を持って生きていないから子どもの心は下を向いている。子どもに希望を持たせるには「大丈夫、きっと良くなる」と言ってくれた父の言葉が支えだった。「親が変われば子が変わる」と親学の持論を展開。教育の道は、家庭の教えで芽を出し、学校で花が咲き、世間の教えで実がなる。育児も介護も家族の絆があってこそ日本型福祉社会で教育は心のキャッチボールである。失った日本人の心を取り戻そうではありませんか」と締めくくった。参加者70名は「本当の男女共同参画の意味がわかった」と目からうろこの話に聞き入った。

 

 

 わけがわからないよ。
 …ちょっとだけ真面目に書いちゃう。日本の社会保障制度の特徴として「家族」と「企業・雇用主」が一定の役割を果たすことを前提に制度を構築してきた点が挙げられる。すなわち、夫は完全雇用が可能な雇用環境でフルタイムの就労を行い生活に十分な賃金を得て、妻は家事・育児・介護のアンペイドワーク(無償労働)を担当する。一方、企業側は、社会保険料の負担に加えて、企業福祉(年功型賃金に上乗せされる家族手当や企業年金)によるサポートを行う。被用者に対する公的年金制度は世帯単位で設計され、女性の老後生活は男性の年金に依存することを想定していた。このような家族モデルに対し、年金の第3号被保険者制度や税制における配偶者への控除制度などの形で支援が行なわれてきた。こうした高度経済成長期の生活モデルを経た世代が、いわゆる団塊の世代である。
 戦後、1960年代から70年代前半にかけて国民皆保険・皆年金が整備され、老人医療費無料化の実現などがなされたが、オイルショックによって西欧型の福祉国家への道を進むことは断念され、「日本型福祉社会論」が登場した。高橋史朗氏は上記の講演会で「育児も介護も家族の絆があってこそ日本型福祉社会で教育は心のキャッチボールである。失った日本人の心を取り戻そうではありませんか」などと述べているが、「日本型福祉社会論」は、「家族や地域のつながりなど日本の“伝統的”・文化的”特徴をベースに制度を構築するべきで、西欧モデルを無条件に取り入れる必要はない」と論じるものである。この言説は、これが本当に“伝統的”・“文化的”特徴であるか根拠が明確とはいえない点、男女の不平等な関係を内包している家族をベースにしている点、そして、こうしたイデオロギー社会保障の削減や縮小を正当化する役割を持つ点に問題がある。常識的に考えて、社会保障費を削減し、家族に負担を押し付けたところで「家族の絆」が深まるはずもなく、むしろ高橋史朗らのいう「家族保護」「家族尊重」こそが「家族破壊」になるだろう。必要なのは、自助の限界を認識した上で制度の再構築をすることである。
 また、高橋史朗氏や伊藤哲夫氏は、トンデモなWGIP論を前提に、社会保障の削減・縮小の主張をしている。高橋史朗氏は、WGIPで「日本人の美しい伝統的精神の解体」がなされ、そこから脱却するため「家族を核とする共同体精神を取り戻すこと」が重要だとして「親学」を提唱する(高橋史朗『「日本を解体する」戦争プロパガンダの現在』2016年 宝島社)。伊藤哲夫氏は『明日への選択』1994年10月号で戦後の日本人はWGIPによりマインド・コントロールされたと述べ、2003年10月号では「保守革命」を提唱し、戦後の「制度・政策を破壊し、もって国家と国民精神を取り戻」そうと主張する。2010年12月号では、戦後の「個人尊重の結果ともいうべき現実が、この家族崩壊の惨状」であり「施設に頼らず、むしろ自らの手で親を介護しようとしている家族を支援したり、保育所に頼らず、自ら子供を育てようとしている母親を支援するといった、これまでのやり方の逆をいく政策も考えられる」などとしている。特に高橋史朗氏は、発達障害児者を攻撃し「このままいけば、生活保護や障害者年金も増え」るとして危機を煽り、「親学」が社会保障費の抑制策になるとしている(高橋史朗『主体変容の教育改革!』2010年 MOKU出版)。なお、稲田朋美氏の場合は、精神論を強調し「自助・自立の精神に基づく小泉構造改革が目指しているものは正しい」が「道義大国・日本が実現されてこその『小さな政府』」であり、「精神的豊かさで他に優越すれば、所得格差は決定的格差ではない」、「精神の優越性を取り戻すことが、日本が目指すべき『小さな政府』」(稲田朋美『私は日本を守りたい』2010年 PHP研究所)などと述べている。どう見てもカルト宗教です、本当にありがとうございました。

 

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