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【トンデモ】高橋史朗『「日本を解体する」戦争プロパガンダの現在』(親学も300人委員会もあるよ)

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 高橋史朗氏の『「日本を解体する」戦争プロパガンダの現在 WGIPの源流を探る』(トンデモ本)によると「日本人の美しい伝統的精神の解体を目指したWGIPは」「多くの『反日日本人』を生み出し、彼らが」「働きかけて反日国際包囲網が形成されるとともに、日本人としての誇りや道義心を奪う『内的自己崩壊』をもたらした」(高橋 p.314)という。えっ、「反日日本人」って…高橋氏のことなのでは…。そして、その状況から脱却するため「家族を核とする共同体精神を取り戻すこと」(同上 p.315)が重要で「親学」が提唱されちゃう。
 高橋氏はいう。「今日も、いまだ戦後の占領政策が日本を支配している」、「『民主主義』の名の下に『愛国心』や『品格』『道義』といった日本人の美しい心が破壊され、『内的自己崩壊』が謀られてきた」、「日本人はその洗脳政策に縛られ、本来の日本の『真実』を見失っているのだ」(同上 p.13)、「今こそ歴史の『真実』を学び、『洗脳』から解かれ、日本人の『心』を取り戻すときである」(同上 p.14)。…どう見てもカルト宗教です、本当にありがとうございました。
 で、WGIPなるものは、洗脳方法を研究していた研究所に源流があるっぽい。キバヤシ氏…ではなく高橋氏は述べる。「ジョン・コールマン博士の『タヴィストック洗脳研究所』と『新版300人委員会』」「によれば、同研究所は『内なる方向付けをする洗脳』方法を開発し、女性らしさや道徳、精神の基盤を根底からくつがえす洗脳工作についても研究していたとのことである。道徳や女性としての行動を徹底的に低落させ、女性らしさを奪う『性革命』を推進したというのだ」(同上 p.96)。な、なんだってー!!
 さらにキバヤシ氏はいう。「国民の道徳心を低下させ、国民としての誇りとアイデンティティーを『完全に破砕』するための長期洗脳計画を研究したのがタヴィストック研究所であるが、その一つが同性愛を推奨することにあった。性役割や男らしさ・女らしさを否定する『性革命』によって、性道徳を破壊し、『女性を社会に進出させて税収を増やし、家族崩壊へと導く「男女同権運動」』を推進する戦略を考案したのである」(同上 p.98)!!!!!
 いや、キバヤシ氏じゃなくって高橋氏です、失礼しました。で、高橋氏は「今日の憲法改正運動は単なる条文改正にとどまらず」「本来の『日本人の伝統的国民精神』を取り戻す国民精神復興運動でなければならないのである。それが『美しい日本人の心を取り戻す』ということなのだ」(同上 p.269)と主張する。そして「『美しい日本人の心』の根底には道義心があり、それを支えてきたのが」「『家族の絆』であったといえる。これを取り戻すことが最大の課題だ。私が親学と親守詩(和歌、俳句、エッセイなど)の全国普及に力を入れてきたのも、そのためである」(同上 pp.269-270)という。へー、そうなんだ、すごいね!
 この本、いたるところに高橋氏の写真(御真影)が掲載されているのも面白い。あと「隙あらば自分語り」がなされる。「私はよく学生たちに、妻に3回プロポーズして3回断られた体験を話す。今なら1回断られれば諦めてしまう若者が多い」(同上 pp.294-295)……とのこと。その他、いろいろあるんですが…朝日新聞(大阪本社)について、「在日朝鮮人には日本人を教育してやろうという思いがあるようだが、記者を怒鳴り付けることもあるそうで、そのような行為によって大阪本社の社会部記者は、『過剰な贖罪意識』『贖罪史観』を恒常的に持つようになっていくという」(同上 p.165)とか「大阪の在日朝鮮人読者を意識した記事づくり」(同上 p.166)とかネット右翼みたいなこと書いちゃうのは残念。保守派の本音がネットで見えちゃったのがネット右翼なんでしょうけど…。
 政治学では、保守主義は、政治のあり方の急激な変化を嫌い、過去からの連続性を何よりも重視する立場である。しかし、日本の保守派は、保守主義の精神に反し、半世紀以上にわたる戦後の日本の歩みを否定し、「戦後レジームからの脱却」なるものを説く。彼らは「伝統」の重視を説いているが、「親学」などの疑似科学の類を持ち出し、実際は「伝統」に興味がない。そのうち「手書きの履歴書」や「Excel方眼紙」なども「伝統」になるかも知れない…。保守主義の祖としてエドマンド・バークが挙がることも、さらに議論を混乱させる。バークが『フランス革命省察』で論じたのは具体的な政治体制であり、漠然とした「伝統」ではない。人々の自由のために制度の体系を守ることが保守主義のはず…。カール・マンハイムは、変化に対する嫌悪や反発としての「伝統主義」と、近代的思想としての「保守主義」を区別しているが、日本には後者はいない…。いるのは「反左翼」の雑多な集合体とでもいうべきか…。
 彼らは「反左翼」で集まり、妄想しちゃう。例えば八木秀次氏は「東西冷戦が終わって、西側が勝利した、左翼は今後いなくなると日本でも見られていました。しかし、気が付いてみたら周りは左翼だらけ」「政府も自治体も実は左翼に握られているのではないか」「冷戦崩壊後、左翼が体制派になってしまった」(八木他、p.6)という妄想をする。そして自由、多様性、弱者の権利などの“甘い言葉”により、「日本は戦後60年かけて糖尿病になっている」(同上 p.10)という。伊藤哲夫氏は、糖尿病の原因を「日本をそうしたいと考えるある種の勢力から攻撃を仕掛けられた結果」(同上)だと妄想する。西尾幹二氏も同調し「攻撃を仕掛けているのが官僚や指導者や、権力の側に回りだしている」(同上 p.11)とする。また、八木氏は、平等を嫌い、「職業に貴賎はない」という平等論が「社会を激しい勢いで壊していっている」(同上 p.13)とし、伊藤氏も「保守思想の一つの重要な要素として、この社会に完全平等なんてない、社会というものは本質的に不平等なものであるといった常識を取り戻すことが大切」(同上)だと主張する。彼らは不平等を好むが、しかし「上級国民」というわけでもない。「一般国民」にとっては迷惑な存在ではあるが…。
 ちなみに2000年、百地章氏は『永住外国人参政権問題Q&A』という小冊子を書き、これを日本会議日本会議国会議員懇談会が推薦し、日本会議のホムーページで掲載した。その中で百地氏は、在日コリアンは「『特別永住者』という、外国人として破格の地位が与えられました」「これは世界にも例のない、きわめて恵まれた地位であって、差別どころか、彼らは日本人以上の特権を有している」と述べている。でも法務省は「特権ではない」といっているから、日本会議は反政府団体ですね、わかります。

 

引用文献
高橋史朗(2016)『「日本を解体する」戦争プロパガンダの現在 WGIPの源流を探る』宝島社
八木秀次伊藤哲夫西尾幹二(2004)「新たな『革命戦略』を阻止し保守は何を為すべきか 日本政策研究センター創立20周年特別座談会」『明日への選択』 2004年5月号 日本政策研究センター