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【トンデモ】保守派の家族論(親学もあるよ)

 ここでは適当に保守派のトンデモ家族論を取り上げる。
 加地伸行氏は、狩猟民族=個人主義、農耕民族=集団主義という区分を用いて、「日本は徹底的にこの農耕民族」「日本では集団主義というのが自然に生まれてきた」(加地 p.38)とする。そして「個人主義というのはわれわれ農耕民族には合わない」(同上 p.39)とし、「日本に個人主義を導入したら、勝手気儘な利己主義になります」「わが国に利己主義者がなぜこんなに増えたかというと、抑止力なき個人主義を推進してきた当然の結果」(同上 p.40)だと主張する。そして、「ダンボールでも安い木でもいい」(同上 p.41)から仏壇を作って「お仏壇を中心に祖先祭祀をベースに家族が集まり、お互いに助け合」(同上)うべきだとする。ダンボールの仏壇で良いなら、発泡スチロールのシヴァ神でも良いのかも知れない…。しかしながら実際には「日本=集団主義」というわけではない。社会心理学では「実証的な研究が『日本人は集団主義的、アメリカ人は個人主義的』という日本人論の通説をまったく支持していない」(高野 p.64)のである。
 小坂実氏は、「個人主義イデオロギーは、『見合い結婚』を衰退させただけではなく、若者の結婚観を変化させた」(小坂 2014 p.32)とする。「『個人の自由』を深く考えずに是として、結婚や家族に価値を見出せなくなりつつある若者の姿が浮かび上がってくる」(同上)のだという。そして、「憲法24条が『個人の尊重』を規定していることを捉え、『家族解体条項』だと得々と語る憲法学者もいる」(同上 p.34)と、謎の説(おそらく八木秀次氏)を紹介する。小坂氏によると憲法「24条が、戦後における家族崩壊現象の元凶の一つ」(小坂 2012 p.16)、「第24条こそは、今日の家族崩壊の土壌」(同上 p.17)らしい。…それ、あなたの感想ですよね。
 こうした感想は、妄想の領域に達し、「親学」が推進されていく。日本会議事務総長の椛島有三氏は、第一次安倍内閣の時代に「国に『親学』普及本部を設置し、家庭の教育力を高め」(椛島 p.25)ていくことを提案している。「『親学』は、男女共同参画に対する対案の意味を持つもので」「ジェンダーフリーに対する保守の側の回答」(同上)であるという…。「親学」推進は、保守派が「家族」、さらには「伝統」について真面目に考えていないことを意味している。結局、保守派は「俺は嫌な思いしてないから」という利己主義にもとづいて怪しげな価値観を押しつけ、「ブラック国家」化を目指しているにすぎない。

 

引用文献
加地伸行(2012)「講演録 『日本の家族』をどう再建するか」『明日への選択』 2012年12月号 日本政策研究センター
高野陽太郎(2008)『「集団主義」という錯覚 日本人論の思い違いとその由来』新曜社
小坂実(2014)「今、家族基本法が求められている」『明日への選択』 2014年3月号 日本政策研究センター
小坂実(2012)「憲法論議 今、なぜ家族尊重条項が必要なのか」『明日への選択』 2012年6月号 日本政策研究センター
椛島有三(2007)「安倍政権の展望と課題 日本会議福岡総会における提言」『祖国と青年』 2007年7月号 日本協議会